背に耳を当てるだけで、聞こえます。あなたの鼓動。
だけど、触れてしまうと、深いところまで触れてしまうと、ちょっと怖い気がします。
あなたは…果たしてそう思ってくれるでしょうか。あるいは。


ちょっと心境の変化で美魚で書いて見ました曲SS『1/2』 music by 川本真琴

 差し込む日差しが犯罪的だ。
暑い。さっき買ったばかりのコーヒーもすっかり缶の表面に玉の汗のような水滴を浮かべている。
僕はその少しぬるくなったコーヒーを飲む勇気が無くて、かといって捨てるのはもったいないと思って
持て余していた。手の中で転がすのもあまりに不快だ。夏なんかキライだ。
日は少しずつ傾いている。それでもこの暑さなのだから。
「…西園さん、大丈夫かな」
この時期だから木陰とはいえ相当暑いに違いない。無風状態の時だってある。
だけど読書を邪魔されたくない彼女が、率先して涼みに来る生徒の多い図書室に行くとも思えない。
倒れてないか心配になって、ちょっといつもの中庭に行ってみることにした。

 「…やっぱりいた」
「やっぱり、というのは多少気になります。私がここにいては、迷惑だというのでしょうか」
どこまで本気でどこまで冗談か分からない。少なくとも、目の前の『喋る日傘』はそう言った。
そして、その日傘は喋るわけではない。その内側に本体がいるのだ。
不思議な空気を漂わせる、その人が。
「直枝さん。お暇なんですね」
「忙しくないと来ちゃいけないのかな」
「…そんなことはありませんが、私は忙しいです」
忙しいって、ただ本を読んでるだけじゃないか。
…これって、さっさと立ち去れという暗号なのだろうか、と不安になる。
というよりむしろ説得力の欠片もない言い訳じゃないか。居直ることにする。
「忙しい割にはゆったりだね」
「文章を読み、その中に秘められた筆者のメッセージを汲み取るのは、決して楽ではありません」
確かに、西園さんの言うとおりだ。
皮肉めいた表現で書いてあっても、その中にはまったく正反対の意志が動いている場合もある。
そして、その意図を酌んだとき、それまでの複線が全部一斉に回収され、結末へと突き進む。
まるで、あのおぼろげなセカイで、少しずつのほころびから真実が見え、そして、結果僕が強くなったように。
「…ねぇ、西園さん」
「…」
すっかり、本の虫。
だから、無理矢理隣に座る。
「…暑苦しいです」
「…軽く傷つくよそれ」
「…でも、居心地悪くは…ありませんね」
そして、彼女はその頭を、僕の肩に預ける。
「こうすると…まるで恋愛小説のヒロインのようです」
「うん」
手にしている本が『猟奇殺人(21) -愛憎の果てのラプソディー-』でも気にしないよ。
実際、今僕たちは少なくとも、恋愛小説の主人公のような立ち位置なのだろうから。
「ロミオとジュリエット…かな」
「…あれは悲劇です。私は、そんなヒロインになりたくはありません」
はっきりと断言する。それは。
「直枝さんは、ロミオのように恋に生き、愛に死ねますか?」
「…ううん、その勇気は無いな」
こんなキャラじゃないのは分かる。死ぬのは誰だって怖いし、愛情の為に死のうとは思わない。
だけど、ただ一つ言えることがあるとするならば。
「…愛の為に、生き抜くよ。きっと」
「…相当クサい台詞だと自覚したほうがいいです。だけど」
直枝さんなら、そう言ってくれると信じていた。
本を傍らに置くと、そのまま肩でウトウトする西園さん。
「お互い、ロミオとジュリエットにはなれそうにないですね」
「なりたいと思わないよ。少なくとも今現在は」
こんなに、幸せだから。
 太陽が次第に水平線に近くなり始める頃、僕は不意に切り出していた。
「ねぇ、明日さ、二人でどこか行かない?」
「…デートのお誘いですか?」
「うっ」
面と向かって言われると相当恥ずかしい。デートというより恭介たちに邪魔されないところに行きたいだけだから。
最近いつも恭介たちと外出したり、気が付くとメンバーみんなで集まって何かをしたり。
だけど、そんな環境には少し飽きていた。それに、もうすぐ短い夏が終わる。だから。
「思い出を、残したいんだ」
「…それは、外泊の準備をして来い、下着は勝負下着で、という隠喩表現なのでしょうか」
「違うよっ!てかなんでそうなるんだよっ!」
あぁ、やっぱヘンな人だこの人。
「そう言えば、シャワーって男女どちらが先に浴びるのでしょうか」
「知らないよっ!」
疲れる。それはもう果てしなく。
デートに誘ったことを少しずつ後悔しながら、何だかんだで、その温かい肌を感じていた僕だった。
終わりかけの夏の風は、どこか優しく、湿気を帯びて僕らの間を吹き抜ける。
まるで、風も夏を惜しむように。


 「おう、理樹。今日は西園と一緒じゃないんだな」
「…さっきまで一緒だったけどね」
西園さんと寮の前で別れ、僕も自室に戻ろうとしていたとき、男子寮の前で恭介に遭遇する。
「さすがは学園一のおしどり夫婦だな」
「そうでもないよ」
先日二人はおしどり夫婦だと小毬が褒めちぎったところ。
『おしどりは、繁殖期のたびにメスをとっかえひっかえします。直枝さんにその度胸は無いので、ふさわしくないです』
とさすが西園さんといわんばかりの反論があったのは記憶に新しい。
「だけど、あながち間違った表現じゃないよな。よし、完成だ」
「何をしてたのさ」
苦笑いしながら恭介に言葉を返すが、流石の僕でも分かる。
自転車だ。
銀色の自転車。サビ落としとオイル、そして布。額には、さっきのコーヒー缶みたいな汗。
「いや、前使ってた自転車を整備したくなってな」
「へぇ。就活用にするの?」
「…その手もあったな」
「考えずにやってたのっ!?」
たまに恭介のこんな向こう見ずな行動とその原動力に敬意すら表したくなる。
その張本人は素でそう考えているらしいが、僕もそのとき、思いついた。
…この時期の徒歩での移動は、西園さんの体に負担がかかるかもしれないから。
「ねぇ恭介、モノは相談なんだけどさ」
「ダメ、貸さない」
「なんでさ」
自転車を貸してくれないなんて、何か理由があるのだろうか。
「金の切れ目は縁の切れ目だぜ」
「いや恭介からお金借りようとか思ってないから…」
「えっ、違ったのか」
わざとらしい反応だけど、きっと内心では既に見透かしてるのだろう。僕の考えなんて。
「まぁ、西園が体弱いからって、自転車で移動ってのも確かにいいことだな。だが理樹」
「うん」
「この自転車を整備するのに俺が何時間かけた、と思ってる」
「…だよね」
それはそうだ。さっき整備が終わったばかりの自転車をすぐに貸してくれなんて厚かましい話だ。
なら明日は精一杯のエスコートで、彼女にきつい思いをさせなければいい。それだけの話じゃないか。
「だから、これを使いたいなら、密度の濃い時間を過ごして来い」
「…えっ?」
聞き返す。さっき貸さないって言ったじゃないか。
「だから、二人きりの時間だよ。幸い明日は開校記念日、そしてあさっては日曜日だ」
「…」
もしかして恭介は、最初からこれを見越していたんじゃないかって思う。
僕が、西園さんを連れ出すことを。
…やっぱり、いつになっても敵わないや、恭介には。
「外泊許可は俺が出しといてやる。お前は準備をしていればいい。もちろん、真人がトレーニングに行ってる間にな」
要らない心配をかけないように配慮するあたり、確信が持てる。最初からそのつもりだったんだ、と。
どうやら西園さんも同様だったらしく、その晩メールが入ってきた。
『外泊OKです』と。
…恥ずかしくなってきたが、あの事故を乗り越えた二人の、ちょっと季節外れなデート。
いや、デートに季節は関係ないのかもしれない。お互い好きという感情さえ抱いていれば。
かくして、僕たちの小旅行の朝がやってきた。


 「二人乗りは…危ないですよ?」
「大丈夫。だからしっかり腕を回しててね」
最後まで二人乗りを渋る西園さんを何とか説き伏せて、乗せることに成功する。
おまわりさんが見たら、きっと二人して逮捕される、と半分本気の半分冗談で語る彼女が可愛かったのは絶対内緒だ。
そして、彼女の腕が腰に回ったのを確認すると、少しずつ、慣れない調子だがこぎ始める。
…自転車なんてここ数年乗ってない気がするし、二人乗りだって、したこともさせたこともない。
だけど一度覚えたことは体が覚えているし、二人乗りだってその延長線でしかない。
まして体の軽い彼女のことだから、案外簡単に出来た。
「…風が、気持ちいいです」
「うん」
前のかごには、僕の荷物を入れたリュック。そして、背中に感じる西園さんの体温。
白いワンピース、白い麦藁帽子、ちっちゃなリュック、そして前のかごには、いつもの日傘。
「やっぱり持ってきたんだ」
「もちろんです」
そして、彼女の頬が、僕の背中に密着する。
「西園さんっ?」
「…直枝さんの、匂いです」
「…」
これは、本当に恋人同士ですること、なんだろうと思う。
リセットされたセカイで、僕は彼女への感情を覚えていなかった。
だけど、それは彼女も同じで、僕たちはまたいつものようにすれ違うだけ。
だけど、確かに作り上げた思い出がおぼろげながらそこにはあって、そして、お互いがそれに気付いたとき。
僕たちは交際を決めた。だから、いつかの世界で起こったこと、やったことは全部リセット。
これが、正真正銘僕たちの初デートだ。それも外泊付きの。
「.時に直枝さんの匂いは乳幼児のような甘い芳香ですね」
「いやいやいや表現がよく分からないから…」
この性格だけは、どうしても直せそうに無いけど、それも彼女らしい、のかな。


 自転車は進む。
夏を終え、おじぎになった向日葵畑の間道を通り越し、海からの風をその身に受けて服を膨らまし、
やがて見えてくる海。完全にオフシーズンで、誰一人見えない、一面蒼の海。
学園を出て南下し、ひたすらこぎ続けた1時間半の道のりは、砂浜の前でブレーキを握って終わった。
「到着」
「お疲れ様でした」
上り坂、下り坂関係ナシに、僕に捕まり続けていた女の子は、笑顔で僕にお辞儀した。
「風が、強いですね」
「うん」
確かに、海からの風は力強く僕たちに吹き付ける。
まだ冷たいわけではないけど、どことなく、鋭い感じがする風に身を委ねていると、西園さんが後ろから抱きつく。
「西園さん?」
「…風が強くて…支えにしては、ダメですか?」
「…いいに決まってるじゃない」
頼られているんだ。こんな僕でも。
「季節がもっと暑い盛りだったなら、海水浴も出来たかもしれませんね」
もうこの時期は砂浜近くまでクラゲが来ていて、泳ぐのは到底適さないらしい。
確かに惜しかったかもしれない。そう言えば水泳の授業なんて無かったが、彼女はどんな水着を
身にまとうのだろうか。授業でも、プライベートでも、スクール水着なのだろうか。
「直枝さん」
「ん?」
抱き締める力が少し、抗議めいて強くなる。
「セクハラ的な発想は、せめて私と二人きりのときは自重してください」
「…いやしてないし、そもそもいつならいいの?」
「…一人で、いたすときとか、ですか?」
「いやいや僕に聞かれても」
どこまでもその脳内が詠みにくい人だ。だからこそ、好きになってしまったのだろう。
そんな愛しい人は、相変わらず僕から離れようとしない。
もう、離れ離れになることはないのに。
「ほら、西園さんも見てよ、海」
「泳げない海を見るなんて、目の前の甘い葡萄に手を伸ばそうとして届かない狐と同義です」
狐と葡萄の童話だ。
狐は、ある日樹からぶら下がっている葡萄が欲しくて、手を伸ばそうとした。だけど届かない。
近くの動物は届いて、そしてそれをさも美味しそうに、狐に見せ付けるように頬張る。
だが捻くれものの狐は、それでも動じない。むしろ意固地になって決め付ける。
あれは、すっぱい葡萄なんだ。無理して甘い甘いと食べているだけなんだ。だから、そんな奴らの仲間になる
必要はまったくないんだ、と欲する感情を押し殺して。
なら、西園さんは狐なのだろうか。いや、違う。この人は。
だから、僕は逆に彼女の後ろに回って、逆に抱き締め返す。
「えっ…」
「ほら、これなら、西園さんも倒れる心配ないし、海が見れるでしょ」
「…」
二人で見ることに意味がある。だから、僕は彼女に見せたかった。
どこまでも青いこの海を。いつかの世界でも来たことがあるような、この海を。
「直枝さんと、同じ方向を見ていられるなら」
「ん?」
「この抱き締め方は、その意図があるのでは?」
「…」
半分無意識だったけど、確かにそうなのかもしれない。
抱き締め、同じ方向を見つめる。それはその人が好きだから、同じ目線で、同じものを見たいから。
「無意識でしているのなら、直枝さんは相当女の子を泣かしたんでしょうね」
「そ、そんなことないよっ!」
クスクス笑うその人が好きだから、僕はもう少しだけ、彼女の小さな体を抱き締めていることにした。


 その後、木陰で二人、海を見ながら語り合った。
お互いのこと、知らなかったこと、あのセカイでは知っていたこと、そして、これからのこと。
付き合ってまだ間もないし、これからもずっとそばにいることが出来るか分からない。
でも、少なくとも僕は、西園さんが僕を拒まない限り、ずっと隣にいるつもりだ。
そんなことを語り合っているうちに、太陽は少しずつ傾き、気が付けばもう海の向こうに沈もうとしていた。
「直枝さん」
「ん」
「そろそろ今夜の宿を探さないといけないですね」
「そうだね…」
もう少し見ていたい、この太陽の神秘。
夕日に染まる彼女の横顔は、これまで見たことが無いくらい神秘的なものだったから。
「直枝さん、聞いていますか」
「うん」
「聞いてないですね。聞いていたなら私が言ったことを復唱してください」
「ローソンよりファミマ」
「違います」
あれ、何でだろう。ファミマが一番じゃないか。
「…直枝さん」
「ゴメン…悪乗りした」
素直に謝る。無意識でも言っていいことと悪いことがあるのは僕だって分かってるつもりだ。
するとどうだろう、彼女はクスッと笑って、言った。
「でも、そんな直枝さんは、どことなく許せてしまいます」
「…そっか」
照れくさくて、先に立ち上がって、そして、ポケットから手を出して、それを彼女に差し出す。
「ほら」
「はい」
手をつなぎ、歩く砂浜。そして自転車にまたがると、彼女を今一度後ろに乗せ、近くの宿場町を目指して動き出した。


 いくら不案内な僕でも、事前に下調べはしておいたつもりだ。
だけど、案外どこも空いていないもので、ようやく見つけた旅館の部屋は、二人で一部屋。
…もっとも、それを期待していたフシはないでもない。
僕だって一応は男だし、大好きな人と同じ部屋で過ごしたい、それくらい思っている。
…だけど、あっさりとその状況に陥り、さらにそれを当たり前のように受け入れた西園さんにもびっくりしている。
そんなことを思いながら、僕は露天風呂から満天の星空を見上げていた。
「西園、美魚」
好きになった人の名前をふと口にしてみる。
「どうして、好きになったんだろうな」
好きになることにあえて理由はいらない気がするけど、強いて言うならば。
不思議な人だった。大人しくて、本ばかり読んでいて、特定の仲間もいるわけではない女の子。
そのくせ毒舌で、時々言うことがグサグサと胸に突き刺される感じがした。
最初は興味本位だった。読んでいる本が何か知りたかった。
そこから始まり、彼女の『影』を知り、そしてそれを見届け、いくつもの苦難を乗り越え。
「…」
未来は見えないけど、これだけは確かに言えると思う。
いつか来るお別れの瞬間まで、せめて僕は僕らしく、彼女を守っていこうと。
夜空は、少しずつさそり座が遠ざかり、そしてオリオン座が台頭し始めていた。
いつか、西園さんが話してくれたことを思い出す。


 「オリオン座の伝説、知ってますか?」
「…うん。乱暴者のオリオンに神様が怒って、さそりに殺害させて、それ以来オリオンはさそりを怖がってるんでしょ?」
「…そうですね。一般概論ではそういわれています。だけど、真実は違うんです」
オリオンと、アルテミスの決して交わることの無い悲しい恋の話。
アルテミスの弟、アポロンは、オリオンが嫌いだった。処女信仰に代表されるギリシャ神話の中で、それが顕著に
現れている一節だ。姐を取られるのが怖かったのか、単に女神としての彼女の威信を汚したくなかったのか、それとも。
ともあれ、アポロンはある日さそりを使ってオリオンを海に落として、その上で『犯行』に及ぶ。
アルテミスの弓の腕を馬鹿にし、そして悔しかったら海に浮かんでいるものを射抜いてみろ、と煽る。
煽りに乗って、矢で射抜いたそれこそ、オリオンの頭部だった。
「そしてアルテミスは悲しみの果て、自らが天を駆けるとき、いつでもオリオンに会えるようにと、彼を星座に加えてもらったんです」
「…そうだったんだ。悲しい、話だね」
最初それを知ったとき、それまでのオリオンに対する自分の認識がイヤになった。
その時、彼女は言った。
「もしも、私がアルテミスだとして、オリオンである直枝さんを射殺してしまった場合、あなたは私を恨みますか?」
「…」
答えられなかった、質問。
今なら答えられる気がする。この空を見ていると、ふとそう思えてきたんだ。
「オリオンと、アルテミスか」
神話の終わり、今は二人とも星座としてこの世界に君臨している。
それと同様に、僕らも同じ時間軸の上で生きている。いつでも会える距離で、いつでもお互いを見つめ合える距離で。
「…よし」
答えを携えて、僕は、『アルテミス』のもとへと向かった。


 部屋の電気は消されていた。
そして、畳の床には大きな布団。大人二人が余裕で入れる大きさだ。
「…子作りレイアウトだ」
なんだそれは、とセルフでツッコミをする。そんなレイアウトあってたまるか、と。
「…直枝さん」
「…っ」
その時。
思わぬところからの声。斜め後ろに、西園さんがいた。
「…直枝さん」
「…うん」
しゅるっ。帯が緩む音。そして、西園さんの浴衣が床に落ちる。
目の前には、白磁のような、彼女の裸体。
「下着…つけてないんだ…」
「冷静に判断するのは嫌われるシチュエーションですが、悪く、無いですね」
そして、胸に飛び込んでくる西園さん。僕の帯も、外される。
「不公平、ですから」
「…そうだね」
お互い裸になって、そして。
抱き締めあう。月の明かりが差し込むセカイで。
「…西園さん。アルテミスとオリオンの話、覚えてる?」
「…はい」
「答え、持って来たよ」
「…えっ」
唇をふさぎ、そして、囁く答えは。

「きっと僕は、アルテミスに感謝すると思う」
「…殺した人間に、感謝?」
キョトンとする彼女に、僕は伝えるんだ。真意を。
「だって、気付かずに殺して、それでも泣いてくれた。星座に加えてくれた。それだけで、その人は救われるよ」
「…それは、結果論です。肝心の途中経過が悲劇でしかありません」
「だから、だよ」
だからこそ、なんだ。
「オリオンが星座に加えられたってことは、神様は二人のふれあいを禁止してるわけじゃないでしょ?」
「…」
「だから、どんな姿になっても、愛していく気持ちは変わらない、きっとそんな気がするんだ」
「…」
「ダメかな」
「…直枝さんらしい答えですね。だから」
大好きです。
重なり合うシルエットを、月が見ていた。
祝福するように降り注ぐ光のシャワー。僕はその瞬間決めたんだ。
きっとじゃなく、もっと、ずっと。この人を守っていこうと。幸せにしようと。
ねぇ、西園さん。ううん、美魚。
僕は、オリオンになれるかな?
抱き締めながら、僕はそんなことを心の中で問うてみることにした。


---唇と唇 目と目と手と手 神様は何も禁止なんかしてない
                     愛してる 愛してる 愛してる----

(終わり)


 あとがき。

先生!相坂がまたヘンな作品を書いてます!しかも相当な駄文です!
しかも最初のうちは曲そのものを表現できていたのに、なんか後半は凄いgdgdです!こんなの作品じゃありません!
大体オリオン座ってなんだよこれ!中盤の狐と葡萄なみにワケ分からないぞ!と怒られそうです!

ってことで、もう無理矢理書き上げました。
…実はこの後、WEB拍手で【エクスタシーシーン希望!】と書いて送ると、エクスタシーシーンが後日追加されるかも!?
ってことで明日も仕事なんで寝ます。時流でした。

【戻る】












【よく気付いたな貴様、忍びの者か!?】