出来ること、やれること、やれることは今のうちにやっておこう。
いつか振り返るとき、つまらない人生だったと後悔するのは癪だ。
いいじゃないか、こんないい仲間達に囲まれているのだから、多少のバカは許されるさ。


唯湖の一人語りみたいな曲SS『アグレッシ部』 music by KREVA

 たかが知れている私の悩み。
つまらない人間関係。つまらない勉強。
なんでこんなコンクリートの箱の中でつまらない人生を送る必要があるんだろうか。
学生だから、未成年者の義務だから、そう括ってしまうのは簡単だ。
周りのつまらない生徒たちとともに、つまらない教師の話を聞く。
こんな味気ない毎日。その繰り返し。
だけど、チャイム・ウィル・リング。やがてなるチャイムと、その先にある楽しみ。
「来ヶ谷さん、先に行くね」
「てめーも早く来いよ!」
「あぁ、騒がなくても私は逃げないよ。分かったらさっさと行けばいい」
そのつまらない毎日を楽しくしてくれるささやかな仲間達がいる。
だから、今の味気ない毎日には拒否権行使。これが、私の今のスタイル。

 「おはよう、来ヶ谷さん」
「あぁ。おはよう」
微笑む少年を見ながら、今まで投げかけることも、投げかけられることもなかった挨拶を交わす。
それも、一つの終着地。
小さい頃から一人ぼっち、笑うことも泣くことも知らなかった私に、楽しさというものを教えてくれた。
「最近来ヶ谷さん、変わったよねっ」
「そうか?私はそんな自覚ないが」
いや、自覚はある。だけど、知らないふりをしておきたい。その楽しさが当たり前になれば、今の新鮮な気分も
幾分か腐ってしまうような気がするからだ。しかしそれを抜きにしても心地よい。今までの自分に戻ろうとする気持ちは
最初の頃、戸惑いと共にあった。付き合い続ければ疲れてしまうんじゃないかという不安もあった。
しかしそれも自分に言い聞かせて乗り越えてきた。だから今がある。
私から私への発言権。もう一人に戻ることは出来ないかもしれない。この感情を知ってしまったから。

 また始めてる。野球、そしてバカな集まり。
だけどもっと弾けてみたい。よく考えたら周りははあはあできる美少女だらけじゃないか。
コマリマックスめ、今日も可愛いな。クドリャフカ君も相変わらずお人形さんみたいではあはあだ。
鈴君、そして理樹君。おっと、後者は男の子だったな。そのあたり敏感な少年だからな。
「まぁ、楽しい毎日ごきげんよう、だ」
「誰に言ってるんだ、来ヶ谷」
「恭介氏、他人の独り言を盗み聞くのはデリカシーに欠けるぞ」
「ならもっと小声で言ってくれよ」
苦笑するのは、理樹君が慕って止まない男、棗兄こと恭介氏。
この男を中心に集まっているようで、実は理樹君が中心のそんな野球チーム。それがリトルバスターズ。
「で。楽しい毎日ごきげんようってどうしたんだ?」
「言葉の通りだ。深い詮索をすれば死」
「…じゃ俺は賢明な選択肢を選ぶことにするよ」
賢明だ。そう苦笑しながら見上げた空。


 それまで信頼できる人も、まして信用すらもしていなかった私が、ここまで変わった。変えられた。
それは、理樹君の力が7割。残り3割?
それは、自分から変わろうとする力。結局私もロボットじゃなくて人間だったというわけだ。
多少悔しい気もするが、ロボットのように生きるのにもちょうど飽きていたところだ。いいスパイスには違いない。
「今までが大人しすぎた私だからな。これからはアクティブでアグレッシブな来ヶ谷で行くぞ。跪くなら今のうちだ、理樹君」
「言ってること良くわかんないけどとりあえず勘弁して欲しいな」
失礼な。私の意思表明をこんなにあっさりスルーするとは。もう理樹君のボールは拾ってやるものか。
見逃しして猫にぶつけてやる。おっぱいも今後一切禁止だ。触らせたことないけどな。
「でも、来ヶ谷さんは変わったよ。僕はそんな来ヶ谷さんも大好きだよっ」
「…っぐはぁっ!」
き、キミは突然何を言い出すんだ…私を失血死させるつもりか!真のアグレッシブキングはキミなのか!
「く、来ヶ谷さん血がっ!」
気にするな、いい鉄分補給だ。いや、吐いてるんだから逆に喪失してるな。取り戻せるのは何割くらいだろうか。
それなら、もし私が変われなかった場合、私は何割の幸せと、何割の視野視界を失っていただろうか。
そう考えると理樹君に感謝したい。こんなにも明るい世界を見せてくれた、彼に。
他の奴らにも一応は感謝してやる。有難がれ。土下座して喜べ。野郎連中は頭を上げた瞬間踏み潰す。ぱんつ見ていいのは理樹君だけだ。
いやむしろ理樹君には刺激が強すぎるな。まずはブラのストラップからか?って何の話だおいっ。
「じゃ、僕行くね。来ヶ谷さんもちゃんと投げ返してね!」
「…」
はぁ、どこまでキミはマイペースなんだ。おねーさん枯れちゃいそうだよ。


 そして白球を追う時間は退屈じゃない。その後のシャワーが格別だからな。
いや何より、こんな時間を過ごせるのは新鮮だから。野球なんかルールだけで満腹だったから。
この気持ちは嘘じゃない。誰が言ってもこのスタイルを変える気はない。
今だから出来ること、それをしよう。何をするでも滞りなく全身飛躍。
悔いのない人生を生きたいからな。常にアグレッシブ来ヶ谷で。
「来ヶ谷、感傷に浸ってるところ悪いが、全部お前を抜けてってるぞ、ボール」
「…わざとだ。理樹君が大嫌いだからな」
「えっ、な、なんでそうなるのさ!」
ケラケラ笑ってやると、理樹君は顔を真っ赤にして怒り出した。
「ひどいよ来ヶ谷さんっ!鈴も何か言ってよ!」
「なぜあたしかは知らんが、少なくともくるがやはじちょーしろ。弾幕張るぞ」
「ぐはぁ」
鈴君、自重とか弾幕とか、どうせ恭介氏がタチの悪い動画サイトでも見せたんだろう。
まぁ、それはそれで鈴君の視野が広がるからいいか。おねーさん大歓迎だ。
「来ヶ谷、後でボール拾いな」
「…何だと?」
「あー、いや冗談デスヨ」
とりあえず真人君を一瞥したら黙りこんだぞ。うん、アグレッシブ。
これから私自身どういう人生を送るか、そしてこの時間を喜べるか分からない。
だけどこれだけは言える。出会えたことだけでも、私は嬉しいから。
…嬉しいとは、女を喜ばせる(女喜)と書くんだぞ、理樹君。だからせいぜい、私を喜ばせてくれ。
…むしろ、悦ばせるのほうがいい表現か?
「来ヶ谷さんライナーっ!」
「えっ」
ゴンッ。とっさに真人君を盾にした。さすが私だ。瞬歩の来ヶ谷と呼ぶがいい。
「…来ヶ谷てめぇ!」
「まぁ気にするな。レディの盾になれたんだ。男冥利に尽きるというものだろう?」
「…よし、ここでバトルだ。いいな来ヶ谷!」
「練習中だよ真人っ!」
あぁ、楽しいな。これが、私の居場所なんだな。
だから、今日も明日もあさっても、どれだけ時間がたっても、ここに来るよ。
もう、暗闇の中にいる必要はなくなったから。


---今日は 俺が俺の味方 広い世界ただ独りになろうが 俺は決めた そうだ アグレッシブ!---
(終わり)


あとがき

曲が短いから内容も短く薄っぺらく。いいじゃない、こんな作品もサ。
って感じではいますが、ストーリー性がないことに大いに絶望しています。
今日もこの後作品をもう一本くらい書こう。それぐらいやってもバチはあたらんさ^p^

たまには恋愛でもシリアスでもなく、何気ない日常の来ヶ谷を書いてみたいと思ったらこんな形に。
これもこれで一つの形なのかな。時流でした。

…ちなみにKREVAは職場の同僚の男連中の愛唱歌です。笑

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