朝。
理樹はなぜか唯湖の部屋にいた。というより乳繰り合った翌日の朝でしかないのだが。
つんつん。隣で裸の唯湖が理樹の脇腹をつつく。
「理樹君理樹君」
「な、な、なに?」
黄金比を保った美しいプロポーションにドギマギしながらも、とりあえず返事を返すと。
「ぱんつ選んでくれ」
「え?」
一瞬、理樹のHDDの思考が停止する。もう一度訊き返す。
「え、僕何するの?」
「ぱんつ選べ。理樹君好みのぱんつで学校に行くぞ」
「…」
そりゃ仮にも唯湖の彼氏(唯湖が男らしいからむしろ理樹が彼女役?)なのだから、愛しの彼女の下着が入っている
タンスの棚くらいは分かる。だがそれはまだ思考が正常な理樹には理性ゆえに致しかねるお願いだ。
「そ、そんなことぶっ!」
「…?」
唯湖の甘えんぼ属性はその大半が無意識の行動が多いが『早くぱんつ穿きたい…おまたスースーする』と無意識で股間を
押さえて震えている仕草に一撃ノックアウトされる。理樹、屈辱の敗北(何にだ
「ぱんつ選んでくれないなら今日はノーパンで登校する。理樹君以外の人にも見られるもん…」
「それは絶対ダメ!嫉妬云々じゃなくてただの痴女だからだめっ!」
一応は嫉妬しながら、唯湖の箪笥の一番上の段を開ける。柔らかそうな生地がいっぱい。目眩がする。
「あぁっ…僕変態になっちゃった…」
「理樹君が変態でもいい、私は理樹君といっしょならそれでいい」
「ぐはっ」
もうかわいさの余り押し倒してしまいそうになる変態(笑
苦しみと期待を噛みしめながら白のぱんつを掴み取る。すごいシンプルな、飾りの少ないタイプ。
「白」
「ヤダ」
「なんで」
「理樹君がイタズラしたあと、シミが目立つからな」
「しないから」
「しないんだ」
「ぐっ…」
「私は魅力ないんだな…」
「…」
拗ねモードに入ってしまった。その場の流れを変えるためにピンクのぱんつを取り出す。フリルのたくさんついた可愛いやつ。
「ピンク」
「ヤダ」
「なんで」
「キャラじゃない。私は理樹君が思うほどピンク思考じゃない」
じゃなんで持ってるんだと小一時間問い詰めたい。
「どういう思考だか」
「理樹君が冷たい…私が嫌いなのか…?」
「ぐっ…」
萌える。お代わり自由なら今すぐヤることヤって出すもの出したい気分だ(ぉ
それを噛みしめながら、黒のぱんつを取り出す。ほとんど紐で出来た、下着と呼べるか分からない代物。
「黒のひもパン」
「ヤダ」
「なんで」
「おまたスースーするからヤダ。それなら最初から穿かない」
「それは絶対ダメっ!」
「理樹君が怒った…」
「ぐっ…」
くすん、と今にも泣きそうな表情。もう萌え尽きるしか選択肢はないというのか。
そしてついに理樹の理性が切れる。うん、お前は頑張ったよ、理樹。もう楽になっていいんだ!
唯湖を押し倒し、四つん這いにさせ、しまぱんを選ぶと、無理矢理穿かせる。
「やぁっ!」
そして暴れる唯湖のお尻をつかむと、めくるめくエクスタシーシーンへ。
「ゆいたーんっ」
「やぁっ、乱暴やぁっ!ちゅーして、まずはちゅーしてっ」
「うぉぉぉぉぉ!」
突然のことで知能が幼児退行した唯湖に甘いとろけるキスをしながら、そのままベッドの中へ逆戻り。
青春とは、すべてが実験さ。うまくまとめたな。


甘えんぼというより幼児退行させてしまいましたSS『唯湖は大変なものを理樹君ごっすんごっすんしていきました』


 よって朝は見事に遅刻。しかも腰が痛い。ちょっと調子に乗りすぎたらしい。
しかも行為の後、時間に気付いた時はすでに絶望的な時間ではあったが走れば一時間目には間に合うはずだったのに。
「服を着せてくれ」
「そんなこと言ってる場合じゃぶふぅっ!」
激しく吐血。悠長にシャワーを浴び、さらにタオル一枚。そして目の前でパラッとタオルが落ちる。
「早く、着せてくれ」
「…」
「じゃこのままいく」
何もつけていない状態でかばんを手に取る唯湖。いやそのまま外に出られたら変態云々の前に寮母さんや
寮長やらに見つかってそれこそ危険なことになりかねない。
理樹は泣く泣く(男冥利に尽きる気がするのは気のせいか?)唯湖を引きとめ、そして下着を着けてやる。
「ぱんつ、脱がすのも穿かせるのも上手だな、理樹君。おねーさん嬉しいぞ」
「どう嬉しいのか後で400字詰め原稿用紙5枚で提出ね」
「…何だと?」
「なぜ怒るのかわかりません!」
もっともだ。分かってるよ理樹。
「まぁ5枚じゃ足りないな。ひたすら理樹君とのピンクな話で官能小説が出来そうな勢いだ」
「それは…複雑だよ」
もう、どうリアクションをしていいか分からず、とりあえずぱんつを穿かせて、お尻を軽く叩いてやる。
「よしオッケー。つぎはブラを…唯湖さん?」
「…」
顔を真っ赤にしてうつむいてブツブツ言ってるので下から顔を覗き込むと…。
「スパンキング…」
「へ?」
「お尻、ぺしぺしされた…でも、なんか嬉しかった…もっと、してくれ」

…ザ・ワールド!
というより時じゃなくて理樹が止まった。
「もっと、もっとぉ…」
おねだり。これでさらに1時間遅れたことを付け加えておく。認めたくないものだな、若さゆえの(ry


 いけません、大佐!というまでもなく、とりあえず目覚めて2回目の行為が終わり、今度こそ慎重に服を着せ、
二時間目の授業に間に合うように走ろうとすると、唯湖が動かない。
「唯湖さん。急がないと遅れるよ!」
「…手」
「へ?」
手?ハンド?サッカーじゃないんだから。てかボールもないけど。
「手、繋いでくれないと走らない」
「…」
「歩かない、動かない。理樹君だけ学校に行けばいい」
「…」
もう、どうにでもなれ。
理樹は開き直り、唯湖の手を掴んでダッシュ。
「このままじゃ怒られるから急ごうっ!」
と、そこで突然ぐ〜っ、と鳴る音。理樹のお腹だ。
「そう言えば朝ごはん食べてなかった…」
唯湖の相手をしていて食べ損ねたのだ。時間はまだ10時半過ぎ。食堂は今昼食の仕込みでとても遅い朝食など
食べにいける状況ではない。仮に行ったとしても『不摂生はダメよ!』とお小言を散々言われてさらに遅れるだけだ。
「って唯湖さんちゃっかりカロ●ーメ●ト食べてるし!」
「んむ?」
手を引きながら走っていたことに後悔した。どこまでもマイペースなお方です。
「むしゃ…理樹君も食べるか?理樹君の分もあるぞ」
目の前には4本入り(税込み210円)。昼食までの時間を考えたら十分だろう。
「う、うん、ありがとう」
「ちょっと待て。誰がタダでくれてやると言った?」
貰おうとしてお預け。そして突き出される口。
「んーっ」
「口移し?」
と、そこでしまった、と思う。案の定。
「私はキス10回ごとに1本と思ったんだが、理樹君が口移しで食べたいなら…」
※しかもここ中庭です。見つかったらモロに危険な状態になります。
「でも動物のお母さんは子どもによく咀嚼したものを口移しで与えると言うし…よし、理樹君」
「そこで目をキラキラさせないでください。後生ですから」
戦慄。そして。
…口移しをしたがる唯湖が理樹を追いかける。中庭を舞台に若いカップルの鬼ごっこが始まった。
その後、危ういところで事務員のおじさんに見つかり、さっさと教室に入れ!と檄を飛ばしていただいて、
渋る唯湖を引っ張って教室に向かったとさ。朝ごはん食べ損ねた状態で。


 ちょうど2時間目が終わった直後に教室に滑り込む。
「あ、理樹くんにゆいちゃんだ〜。おはよ〜ぅ」
独特のアップダウンのある小毬の声。それに真っ向から立ち向かう唯湖。
「そのゆいちゃんは勘弁してくれ。ゆいちゃんとかゆいたんとか呼んでいいのは理樹君だけだ」
「…ふぇ?」
イマイチ状況がつかめていないがすぐに赤面し、『あぁ、あぁ』とうわ言のように呟きながら悶えだす。
「さて、コマリマックスが悶えているうちに次の授業の準備だ」
「その前に●ロリーメ●トを…」
本当に空腹で死にそうです。お願いです。そんな哀れな小動物の目をしたものだから。
「そうか、口移しの続きか」
「ほわっ!?く、口移しっ!?」
しかも続き!?と赤面しのた打ち回る小毬を放置して、唯湖の目がキラリと光る。
「さぁ、それなら楽しい楽しい朝食ターイムだ」
「いーやー!」
逃げ回る理樹。直後、チャイムが鳴り、3時間目が始まった。


 ---唯湖さん、やっぱすごいな。
「オルレアン解放後諸侯の裏切りによりジャンヌは捕虜となる。そして牢内で激しい拷問と男装させられたまま強姦されるなど、
ライミー野郎(※イギリス人の蔑称です。使わないでネ!)の半ば腹いせみたいな仕打ちの末、異端として火あぶりに処せられた」
「そ、その通りだ」
3時間目は世界史。最初は英仏百年戦争の概略だけ説明しろという話だったのに、既に20分目。この後の展開を考えれば、間違いなく
唯湖の説明だけで授業が終わってしまう。そう思った教師は話を全員に振る。
「よ、よしいいぞ。さすがだな。みんなも見習えよ!世界史は常に予習復習温故知新だ!」
「おいちょっと待て、話はこれからがいいところだぞ」
と、いいながら、仕方ないなと着席する唯湖。

---勉強も出来るし、ノートもバッチリだし。
---みんなから頼りにされてるってすごいな。
そんな彼女を誇りに思いながら、何故か涙目になっている理樹。
---だからお願いです。
---僕の上じゃなくて、自分の席で勉学に励んでください。

 例によって、やはり理樹の上で勉強している唯湖。
教師もそろそろ潮時だと、唯湖に話しかける。
「それで、時に、来ヶ谷」
「…なんだと?」
「…じゃなかった、直枝」
「違う」
「あ、あぁ、な、直枝(妻)」
「うむ、物分りが良いな。3回間違うKYなら今頃断罪しているところだ」
「…」
この世界史教師は、今この瞬間を以って教師を辞めたいと思ったに違いない。
その後、何故か自習になり、そして授業終了後理樹が生徒指導室に呼び出されたのは言うまでもない。


 「最初は怒られたよ?遅刻はするし、不真面目な態度で授業を受けるし、恥を知れ!とか」
「でも僕の現状を話したら泣きながら同情されたよ…直枝、お前苦労してるな、俺も最近妻がな…とか」
「アイツ嫁さんいたっけ?」
昼休みの食堂。やっとこさ本日初の食事にありつけた理樹だが、あまり元気がないし食欲もない。
もう空腹がピークを越えて、何も食べなくてもいいくらいになっている。
「まぁいてもいなくても同じことだ。さて、明日は土曜日だな。久々に野球をするか」
「そうだね…気分転換に身体を動かしたいし」
いろいろあったから青春の汗を流したい。そう思って恭介の意見に賛同する。
そして席に着き、割り箸を割っていただきます、と手を合わせた瞬間。
「さぁ理樹君、行くぞ」
ぐいっ、思いっきり引っ張られる。
「えっ、ちょ、来ヶ谷さんっ!」
割り箸を持ったまま猛烈なスピードで駆け抜ける青春の廊下。
「…ご愁傷様。じゃ理樹の分はみんなで山分けな」
「よっしゃオレカツ!」
「誰も助けに行かないあたり、もうみんな諦めてるんだな…」
謙吾が一人静かに呟くと、理樹のお盆から漬物だけ貰う。
「結局テメェも食うんじゃねぇか」
「食い物を粗末にする躾はされてないからな。キャベツやらカツの衣をボロボロこぼすどこかの誰かと違ってな」
「んだとコラ!」
「やるか?」
「はいはいそこまでだ。喧嘩するくらいなら俺が貰う」
熱くなる二人をなだめながら、弟分である理樹の成長を…。
成長を…。
成長を…。
「俺も彼女いねぇのによぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「お前、(21)だから無理じゃね?」
「うっせ!俺は断じて(21)じゃねぇ!」
こちらもこちらで騒がしい昼食だった。


 一方こちら、放送室に連れ込まれた理樹。
「ごはんはいっしょに食べると取り決めしたはずだ。あのバカたちに唆されたんだな」
「いやいやいや…」
今にも恭介たちをブッコロ!しそうな唯湖に苦笑するしかない。
「まぁそんなことはどうでもいい。理樹君の分のパンも買ってある。もうお預けはしないから食え」
どんっ。
『レバニラ炒めパン』
『オットセイの×××のホットドッグ』
『朝鮮人参コロッケパン』
…なんとコアなメニューを。
「探すのに苦労したぞ」
「こんな苦労しなくて良いから、お願いだから普通のもの食べさせて…」
項垂れる。てかオットセイの×××ってなんだろう。
「精がつくな。今夜もお盛んになりそうだ。あぁ、今のうちに避妊具を買い込んでおかないと」
「避妊するなら最初から精つけなくても…」
「なんだ、理樹君は赤ちゃんが欲しいのか?いいぞ。それならこれもくれてやる」
どんっ。
『マリモッコリドリンク』
…。
---神様、許されるなら発言の許可をお願いします。
(天の声)「だ が 断 る」
…。
理樹にとっては、現状、唯湖のほうが大きな赤ちゃんなワケで。
苦笑しながらオットセイの×××のホットドッグを頬張る。
直後、あまりの不味さと某宇宙人や未来人や超能力者が大好きな団長が喜びそうな不思議世界が広がり、
そして理樹は、静かに意識を閉じた。


 「…」
「理樹君機嫌を直してくれ…」
「…」
ちょっと悪ふざけが過ぎたと反省する唯湖だが、沸点まで達した理樹は容赦ない。
「…」
「理樹君…寂しくて死んじゃうぞ…」
「…」
理樹がそっぽを向く。相当怒ったらしい。
「理樹君っ…」
そして、何かを躊躇うと、ピアノの前に向かい…。
「…」
モード:ギター
曲名:『唯湖は大変なものを理樹君理樹君していきました』
なんかどっかで聞いたメロディーが部屋を埋め尽くす。そして、熱唱する唯湖。
「キライ〜キライ〜り〜き(アンアアアンアンアアンアン)」
そしてマイクのスイッチが入っていることに気付く。コレはいろいろヤバイ!
「わ、わかった機嫌直ったからもう勘弁してっ!」
「うむ。最初から素直にそうしていればいいのだよ」
そして頬擦り。もう、どうにでもなっちまえ!とキス。
因みに、この後二人が放送室から出てきたのは、4時半過ぎ。
やけにやつれた理樹とお肌ツヤツヤの唯湖がグラウンドの連中に合流したのは言うまでもない。


「姉御いつもキレイっすよネ!秘訣は!?」
「うむ。適度な運動と
良質なタンパク質の補給だ」
そしてその場に居合わせた女子の一部はすぐに察する。理樹がやつれた理由と、良質なタンパク質の意味を。
あぁもうジーザス。さっさと日曜日になっちまえ!
(続く?)


あとがき

唯湖さんが幼児退行しました。
ってか、もうお腹一杯で書けそうにありません。
ってか、何ですかこの展開は!
ってか、日曜は愚か理樹君に明日が来るのかすら疑わしい!
ってか、理樹君が(人間的な意味で)こ〜むらが〜えった♪

さて、もうこのシリーズ終わって良いかな。てかR18にしたほうがいいのかな。
時流でした胸焼けするぅ。

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